FC2ブログ

カレンダー

07 | 2019/08 | 09
- - - - 1 2 3
4 5 6 7 8 9 10
11 12 13 14 15 16 17
18 19 20 21 22 23 24
25 26 27 28 29 30 31

プロフィール

rekikyo

Author:rekikyo
大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

最新記事

最新コメント

カテゴリ

リンク

検索フォーム

総訪問者数

大阪大学歴史教育研究会第54回例会の概要報告

 皆様、大阪大学歴史教育研究会の公式ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
 今回は、わたくし特任研究員の鍵谷寛佑が記事を担当させていただきます。私自身二回目の執筆になりますが、どうぞよろしくお願いいたします。

 今回の記事の内容は、一昨日の10月15日(土)に大阪大学豊中キャンパスで行われた「大阪大学歴史教育研究会第54回例会」の総括です。今回で54回目を迎えるこの例会には、大勢の方々が集まってくださいました。
 今回の発表は、桃木至朗先生(大阪大学)の「気候変動の世界史を学ぶ―できごと・原因・研究方法―」山下宏明先生(大阪府立園芸高等学校)の「災害と戦争から見つめ直す高校日本史の試み―東日本大震災を受けとめる歴史授業とは―」の二本立てで行われました。
 この二つの発表に共通するテーマは、すなわち「環境」です。
 今年の3月に東日本を襲った未曾有の大震災は、我々を震撼させるものでした。奇しくも、我々が環境というテーマに目を向け始めた矢先の震災で、今後に備えるためにも、同じような悲劇を繰り返さないためにも、このテーマに対する知識を深めていくことが重要ではないでしょうか。
 そこで今回、環境の専門家ではない桃木先生が環境について学んだことを報告し、それについて専門家の方(総合地球環境学研究所の関野樹先生)にコメントを付していただき、出席していただいた方々にも、環境に対する知識を深めていただこうという意図をもって、研究会は始まりました。

 桃木先生の報告で特に中心となったのは、タイトルにあるように気候変動についてでした。気候変動の歴史を取り上げる教育的な意義の一つは、世界史と日本史の連結です。地域的な特徴はあるにせよ、気候に国境などというものは存在しません。分離されがちな、世界史と日本史を繋ぐための一つの鍵であると言えるでしょう。もう一つの意義は、地理や地学、人口学などを含めた文理融合をも可能にするという点です。これは、まさに新しい指導要領にピッタリと言えます。
 報告の中では、まず「気候変動の世界史への影響」から考察が試みられました。氷河時代を経て、完新世における農耕の発生、中世の温暖期と近世の小氷期、そして、現代の気候変動と地球温暖化についてそれぞれ詳細な説明が加えられていました。それぞれの時代において、気候だけですべてが決まるというわけではありませんが、気候変動が大きく作用していたことは間違いありません。また、それぞれの持つ文化が影響し、イヌイットのように気候変動にうまく対応して生き延びた民族もあれば、ヴァイキングのように適応できずに消滅してしまった人々が存在した例や、近年の例では、1972年のエルニーニョと世界食糧危機(ペルーの漁業危機がもたらした影響)などが取り上げられていました。
 続く「気候変動をひきおこす諸要因と影響の出方」では、太陽と地球の関係、大陸と海洋および大気循環、火山活動と温室効果ガス、気候変動のさまざまな影響が大きな軸となっていました。内容は、主に太陽黒点の増減による太陽活動の変化、英領インドのモンスーンを研究したギルバート・ウォーカー(1868-1958)の「南方振動」に始まるテレコネクション(遠隔相関)の発見と近年の大気海洋相互作用への注目、火山がもたらす影響、気候変動による漁業や農業への影響についてでした。
 最後の「気候変動の歴史を復元する方法」では、自然科学的方法、文系的方法からアプローチがなされていました。自然科学的方法は、すなわち近代的気象観測、木の年輪や土壌中の花粉の分析、氷床コア、湖沼コアなどの分析です。一方の文系的方法は、正史や年代記、教会史の文献から気象に関する記録を調査すること、絵画に見られる景色の変化を捉えることなどが挙げられていました。
 簡単なまとめになりましたが、重要な参考文献として田家康氏の『気候文明史 世界を変えた8万年の興亡』日本経済新聞出版社(2010年)、安田喜憲氏の『気候変動の文明史』NTT出版(2004年)が紹介されていましたので、このテーマに関心がおありの方はこちらの書籍もご参照ください。
 専門家の関野先生の意見としてあがったのは、「気候変動にも色々なスケールがあるので、大陸、造山運動と一年、二年の単位の話を同じにすべきではない」、「東京のヒートアイランド現象は特殊である」といったものでした。
 また、院生からは、近代における農業のプレゼンスについての質問が出ていました(世界システムの周辺地域で開発が行われ、農業は大きく進展したという回答が桃木先生からありました。トウモロコシの生産などがそれです。)。

 二つ目の報告は、大阪府立園芸高等学校の山下宏明先生による「災害と戦争から見つめ直す高校日本史の試み―東日本大震災を受けとめる歴史授業とは―」でした。
 阪神大震災を経験して、また、今年の東日本大震災を目の当たりにして、山下先生の「災害と戦争」に対する心境が終始熱く語られ、長年教壇に立つ熟練された語り部としての本領がいかんなく発揮されていた印象でした。
 報告の内容は、主に「災害と戦争」の「歴史基礎」との関係、園芸高校での歴史授業の回顧でしたが、特に、園芸高校での授業実践は非常に興味深い内容でした。細かく整理された、日本史Aの授業プリントは、日本の歴史に合わせて「災害と戦争」が細かくリンクしており、まさに今の時代に適した授業内容になっていたと思います。
 また、参考文献として多くの書籍を紹介していただき、本を読んで調べるということの重要性を改めて実感させられました。また、山下先生は博物館や神社に足を運び、「本物を見る」ということを重視されており、実際に自分が経験した話を生徒に聞かせると、生徒はそれに応えてくれるということで、見て経験することの重要性が強調されていました。この点は、特に私を含めた若手教員にとって大きな刺激となりました。

 簡単な例会総括になってしまいましたが、今回の第54回例会も大盛況であったかと思います。来月からは、3回にわたって先生と大阪大学の院生が特定のテーマで発表を行います。次回の11月19日(土)の第55回例会は、中村征樹先生(大阪大学)と大阪大学の院生による「科学技術」に関する発表です。ふるってご参加くださいますよう、お願い申し上げます。(文責:鍵谷寛佑(事務局))

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

<< 携帯電話に関する校則にたとえて | ホーム | 時間版のGISは可能か?~GT-TimeとGoogleのタイムライン検索から考える >>


コメント

コメントの投稿


管理者にだけ表示を許可する

 ホーム