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Author:rekikyo
大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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九州大学第7回歴史学・歴史教育セミナー体験記

 皆様、大阪大学歴史教育研究会の公式ブログにお越しいただき、ありがとうございます。
 公式サイトの立ち上げ以来、このサイトの管理人である岡本弘道さんが早くも3つの記事をお書きになっています。そのあとを受けまして、二番手としてわたくし特任研究員の鍵谷寛佑が記事を担当させていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。私は、近代イギリス史専攻で、18世紀半ばに旗揚げされた競馬統括団体ジョッキー・クラブを主たる研究対象としています。日本では、あまり良いイメージでとらえられることのない競馬ですが、イギリス上流階級が競馬に込めたアレゴリー(彼らが自らの血統と重ね合わせる形で創造することになるサラブレッド)や、クラブそのものの研究、また娯楽(レジャー)、スポーツとしての競馬、さらにスケールの大きな話をすれば、「競馬と帝国」など、様々な分野からのアプローチができる可能性を秘めているもの、それが競馬なのです。
 特に、近年の帝国書院の『新詳 世界史B』では、近代イギリスにおけるパックツアーが見開きで紹介されており、こうした生徒の興味を引くテーマの一つとして、競馬が将来コラムになる可能性もあるかもしれません。
 私は、今年の4月から関西学院高等部と甲南中学校で非常勤講師をさせていただいておりますが、時期を同じくして大阪大学の秋田茂先生からお誘いを受け、大阪大学歴史教育研究会に参加させていただくことになり、6月末からは、特任研究員として迎えていただく運びとなりました。

 さて、今回は8月20日(土)と21日(日)に、九州大学の箱崎キャンパスで行われた「第7回歴史学・歴史教育セミナー」の体験記を私なりにまとめてみたいと思います。
長い歴史を感じる箱崎キャンパスで、統一テーマを「歴史学と歴史教育のあいだⅠ」として行われたこのセミナーは、九州の高校教諭を中心として、約60名が出席していました。

 まず九州大学人文科学研究院准教授山口輝臣氏の「天皇家の宗教―明治・大正・昭和」(報告1)から始まりました。明治維新によって天皇家の宗教が神道となったという見解に疑問を呈しつつ、明治、大正、昭和における天皇家の宗教について考察した山口氏の報告は、非常に興味深い内容でした。我が国が、明治維新から昭和の時代にかけて、デモクラティックな経験や戦争など様々な経験をする中で、天皇家の宗教がどのように変化していったのかについて、祭政一致を目指した国学者たちの主導によって行われた制度の変化や皇族の葬儀の例などを通じて細やかな考察がなされていました。

 続く報告は、九州大学比較社会文化研究院講師マシュー・オーガスティン氏の「占領期日本における渡航と国境管理」(報告2)でした。日本と朝鮮の関係について、特に戦後の人の流れに注目したこの発表では、朝鮮の人たちの往来と個別の制度が存在した出入国管理体制についての検証がなされていました。京都育ちというオーガスティン氏の流暢な日本語が大変印象に残った反面、レジュメやパワーポイントなどの資料がまったくなかったため、頭の中で整理をする作業が困難を極めたことも記憶に新しいです。

 初日の三番目の発表は、弘学館高等学校教諭平山広幸氏の「高校の歴史教育の現場から」(報告3)でした。弘学館高校は、世界史が受験科目として設定されている東京大学や京都大学、一橋大学、早稲田大学、慶應義塾大学などの文系学部の入学試験を突破できる学力を養成することを目指しているとあって、実際に資料として配られた授業プリントの情報量も膨大なものでした。発表は、主に受験対策を軸として進められました。各大学の研究者の最新の研究が入試問題に反映されやすいという指摘や、新聞やテレビニュースでの報道を生徒たちに紹介する指導法など、平山氏の授業実践が報告されていました。生徒たちに問題意識を持たせて、歴史に対する興味を引き出すという点は、中学、高校で教鞭を執る私にとっても大きな関心です。自分が勤める以外の高校で行われている授業を知ることができたのは有益だったと思います。平山氏の報告後に簡単な感想を述べさせていただきましたが、この際、中村薫先生の助太刀のもと大阪大学歴史教育研究会についてアピールさせていただきました。

 初日最後の報告は、宮崎県立宮崎南高等学校教諭中野耕一郎氏の「子どもが自ら解釈を築く授業を目指して」(報告4)でした。中野氏は発表の中で、自ら「授業の失敗例だ」と述べられていましたが、実際に行われた授業の内容に目を通すと、なるほどと納得しました。例に挙げられていた授業は、1920年代後半から1930年代半ばまでの日本近代政治史をテーマとし、「なぜ国民の声は反映されなかったのだろうか?」という授業題目が掲げられていましたが、学習指導案を見る限り、生徒たちにとってはかなり難解なものとなっていた感は否めませんでした。「子どもは研究者ではない」とおっしゃられていたので、それならば、高校生のわかる言葉、かみ砕いた表現で行うべきだったかと思います。この点は、大阪大学歴史教育研究会では特に注意をしている点ですので、自分も常に留意しなければならないと改めて実感しました。

 以上の4報告終了後に懇親会が行われ、その席で九州大学の先生方、また、高校の先生方との談笑を楽しむことができました。

 二日目は、九州大学人文科学研究院教授宮本一夫氏の「先史時代は世界史たり得るか?」(報告5)で幕を開けました。この発表では、ここ10年ほどの研究成果で教科書には記載されていない内容が紹介されていました。先史時代の東西ユーラシアにおいて個々の農耕社会が成立し、それが草原シルクロードを伝わり、コムギ、オオムギ、ヒツジの伝播をもたらすという、双方向的な可能性の指摘や、先史学者の積極的な世界史への関わりの必要性などが強調され、全体的に見てかなり壮大なスケールの発表だったように思います。

 報告の最後は、九州大学人文科学研究院教授岡崎敦氏の「テクストと表象―西欧中世史研究における史料問題―」(報告6)でした。2010年の『史学雑誌』の回顧と展望を踏まえながら、西欧中世における封建社会の私文書と12世紀の愛の書簡集を題材として、史料にまつわる近年の議論が紹介されていました。

 岡崎氏の報告の後、昼食をはさんで部会別ディスカッションが行われ、私は、世界史部会に参加させていただきました。部会は、高校教諭が世界史の授業を行う際の疑問点や、最新の研究成果を大学教員に問いかけるという形で始まり、「夏王朝の研究の状況」、宮本氏の報告5に関連して「中国においてコムギの生産がいつからはじまったのか」、「元の滅亡について」、「叙任権闘争について」などの質問が出ました。これに対し、九州大学の教員が丁寧に解説を加えており、私も最新の研究成果を知ることができました。

 続く部会別のフリーディスカッションでは、前日の平山氏の報告に関連して進学校での世界史教育の現状や、世界史Aの見直し、九州大学でも世界史を受験科目に加えて欲しいなどの意見が、高校教諭の中からあがっていました。フリーディスカッションの中で、私も発言をする機会をいただき、大阪大学の目指す歴史や自らの授業実践について公の場で示すことができ光栄に思っています。

 最後の全体ディスカッションでは、次回のセミナーについての予告がなされたのち、「大学教育と高校の歴史教育をどのように繋げていくのか」、「大学側は高校教育に何を望むのか」といった質問が飛び交い、セミナーの最後まで参加者全員が歴史教育に真摯に向き合う姿勢が前面にあらわれていたと思います。

 私は、特任研究員に任命されてまだ日が浅く、大阪大学以外の歴史教育セミナーに参加させていただくのは初めてのことでしたので、非常に新鮮であったと同時に、やはりセミナーごとの「色」がハッキリと出るものだと感じました。こうした経験を通して、大阪大学歴史教育研究会の中でどのように活動していくべきか、歴史をどのように生徒たちに伝えていけばよいのか、色々な糧となったかと思います。

 さて、まだまだ書き加えねばならない点もありますが、ここで今回の体験記の筆を置きたいと思います。今後も、大阪大学の特任研究員として様々な活動を行っていきたいと考えておりますので、皆様どうぞよろしくお願いいたします。(文責:鍵谷寛佑(事務局))

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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コメント

九州大学歴史セミナーに参加して

 私も鍵谷さんと一緒に九州大学のセミナーに参加しましたので(1日目だけですが)、初めてのコメントをしようと思います。セミナーの内容は鍵谷さんが書いていますので、私のほうは全般的な感想を書くことにします。
 九州大学のセミナーで感じたことが二点あります。一つは九州大学では、日本史関係の内容と世界史関係の内容が半々くらいあったということです。この点について、率直な言い方をしますと、大阪大学では世界史が中心になっているということです。とはいえ、後藤さんの投稿にありましたように両者を分けるということが不合理で、世界史に日本史を含むという観点に立てばなんら問題はないと思いますが、大阪大学歴史教育研究会に高校の日本史の先生の参加が少ないということ(その他いくつか)は事実だろうと思います。
 次にセミナーに参加された福岡県の先生からいただいた手紙には、九州大学のセミナーは、かつて大阪大学が実施したCOEの事業に参加された先生方が九州大学に要請してできたとありました。セミナーに参加されている先生方は地元福岡だけでなく、宮崎県や熊本県など九州各地に及んでいます。今年宮崎県で開かれた全歴研(全国歴史教育研究協議会)で知ったことですが、九州高等学校歴史教育研究協議会という組織があり、毎年持ち回りで九州各県で研究会を開かれています。翻って、関西地方を考えますと、私が所属した大阪府高等学校社会科研究会と京都や兵庫・奈良の研究会との交流はありませんでした。
 最近の都道府県の財政事情から高校現場での研究会活動は困難な状況ですが、兵庫県では夏休みの巡検に手弁当で65名の参加があったそうです。このことは企画さえよければ、先生方の研修への意欲は金銭的なものを超越しているということを示しています。
 3年後の全歴研の全国大会の開催について関西の某府(知事が大変な方で私は奈良県民で良かったと思っています)が前向きな検討をしていただいているようです。その前年が今回の科研の最終年にあたり、大阪大学歴史教育研究会が大会「阪大史学の挑戦3」をすることになっているようですので、関西の各府県高等学校社会科研究会との連携ができればいいなと思っているのですが、皆様のお考えは如何でしょうか。 

連携。

中村薫先生
セミナーでは、貴重なアシストをありがとうございました。
私も、九大のセミナーに参加させていただいて、九州各地から参加されていた先生方に驚きました。
私が教鞭を執っているのは兵庫県ですが、各先生方の意識は一都道府県に留まるものではないと考えています。
私も事務局員に就任して間もないですが、こうした連携は、大きな力となるのではないかと思っています。


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