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Author:rekikyo
大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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借款をめぐる日中関係

 初めまして。後藤敦史さんの後任として、2012年度から歴史教育研究会の特任研究員に就任致しました大阪大学大学院文学研究科博士後期課程3年の久保田裕次です。よろしくお願いします。日本近代史、特に日露戦争後から第一次世界大戦期までの日本外交史・日中関係史を研究しています。今回は私の研究テーマについて簡単に紹介させて頂きたいと思います。

 私は、大学4年の3月に卒業旅行で上海を訪れたことがあります。私が卒業旅行先になぜ上海を選んだかというと、卒業論文で三井物産や横浜正金銀行(現在の三菱東京UFJ銀行)の中国での経済活動を取り上げたからでした。上海の「外灘」と呼ばれる一角でひときわ目立つ建物が上海の税関や元香港上海銀行上海支店であり、それらに比べ小規模であるものの、正金銀行や日清汽船の支店も軒を連ねていることを事前に知ってはいました。しかし、実際に訪れてみたことで、上海を代表する風景に近代日本が一役買っていたことを肌身で感じることができました。
 一方で、上海万博を控え、上海環球金融中心はほぼ完成し、建設ラッシュが進んでいました。浦東地区の摩天楼は中国の目覚ましい経済発展を象徴しているようでした。地下鉄では、英語も中国語もほとんど分からない私たちに、ある中年の男性が地下鉄の路線図を指さして「12本になるんだ!」(不確かな記憶ですが、当時は6本位しかなかったと思います)と自慢げに話していたことは、今でも印象深く覚えています。

 こうした経験が私にどのような影響を与えたか具体的には分かりませんが、現在、私は経済問題をめぐる近代の日本外交・日中関係を研究しています。特に、「漢冶萍公司」という中国最大の製鉄会社に対する日本の借款に注目しています(借款とは、簡単に言えば、国家間のお金の貸し借りのことです)。漢冶萍公司は鉄鉱石・銑鉄の輸入先として、近代日本の製鉄業、さらには産業発展には欠かせない存在でした。そのため、日本政府は官民一体となって、漢冶萍公司へ借款を供与し、関係を深めていくことになります。ブログをご覧になっているみなさんの中には、対華21カ条要求や中国の近代化などとの関わりで、知っておられる方もいるのではないでしょうか。
 漢冶萍公司は工場や鉱山を現在の武漢周辺に所有し、それを上海の本社で統括するという経営形態をとっていました。長い間、公司の社長を務めた盛宣懐という人物は、李鴻章の幕僚として活躍した経験を持ち、上海の経済界に大きな影響力を持っていたと考えられています。また、鉄道や海運業の発展など中国の近代化に尽力した人物としても知られています。
 中国語の文献や史料を読み進めていく中で、近代(現代もそうですが)中国の政治・社会の複雑さに圧倒され続けています。中国は広大な土地、膨大な人口を抱えています。そのため当然のことかも知れませんが、一つ漢冶萍公司に関係している主体を挙げてみても、中国政府(清朝や中華民国政府)、工場や鉱山が立地する湖北省・江西省政府、最高経営責任者であり上海財界の有力者である盛宣懐、反盛宣懐派などがいて、それぞれの思惑が複雑に交差しています。こうした中国側の状況は日本による借款を常に左右しており、ふと気がつくと、私は漢冶萍公司や盛宣懐そのものに大きな魅力を感じるようになっていました…
 それはともかく、私は、製鉄業の発展にとどまらず、長江流域利権の拡大という政治・外交的な点においても、漢冶萍公司が日本にとって重要な存在であったと考えています。そこで、現在はイギリス外交文書(イギリス政府は長江流域を自国の「勢力圏」と捉えていました)や盛宣懐档案などの調査を進めています。昨年11月には、大阪大学OVCプログラムに採用され、約2週間にわたるイギリスでの史料調査を行う機会を与えられました。主に辛亥革命前後のF.Oを調査し、刊行されていない膨大な量の史料を発見することが出来ました。

 中国の複雑な政治・社会構造を踏まえた日中関係史の分析は容易ではありません。しかし、今後益々重要になっていく日中関係を考える上で、これからは表面的な外交交渉にとどまらず、日中両国の国内問題との関わりを踏まえた研究が特に求められていると考えています。(文責:久保田裕次(大阪大学大学院文学研究科特任研究員))

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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