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原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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大阪大学歴史教育研究会第60回例会の概要報告

 特任研究員の久保田裕次です。かなり時間が経ってしまい申し訳ありません。5月19日(土)に開催された第60回例会の参加記です。(当日の報告レジュメは本会の公式HPの活動記録からご覧頂けます。)第60回例会では、鍵谷寛佑氏(大阪大学特任研究員)が「世界史に見る家族・親族・婚姻」をテーマに報告を行い、櫻田涼子先生(京都大学GCOE研究員)には、文化人類学の視点からコメントを頂きました。鍵谷報告は、ジェンダー史の研究状況や以後の例会における議論の前提を共有することも目的とするものでした。

 鍵谷氏は、社会の縮図である「家族」という存在への分析が益々重要になっていることを指摘すると同時に、様々な偏見が持たれている現状に対して問題提起を行いました。現在の日本においては、一夫一妻制となってはいるが、歴史的に見ると地球上には多様な婚姻や家族の形態が存在していたことをまとめられました。また、家族という概念が歴史的にどのように形成され、変化したのかを整理し、家族概念は職業圏と私生活圏との分離、宗教観念の変化や産業構造の転換などから大きな影響を受け、様々な形態を見せるようになったことを示されました。一方で、イギリスを中心に「家族・親族・婚姻」の具体的事例も提示されました。鍵谷報告は、前近代の「家族・親族・婚姻」の「不安定さ」を浮き彫りにすることによって、現在の家族像が近代以降に創られたものであることを私たちに再認識させ、「家族・親族・婚姻」に対する偏見の見直しが必要であることを投げかけるものでした。

 鍵谷報告に対し、櫻田先生からは文化人類学における親族研究の蓄積、ご自身の教育実践をもとにコメントを頂きました。文化人類学研究の父と呼ばれているモルガンが、家族・婚姻制度の確立こそが原始乱婚、原始母系社会、動物的原初状態からの脱却の徴であると考えたこと、こうしたモルガンの考えに対しては、ラドクリフ=ブラウン、クローバーから自文化中心主義との批判が寄せられ、歴史主義や構造機能主義の視点から社会や親族の関係が再検討されるようになったことが説明されました。その後、シュナイダーが、ミクロネシアのヤップ島社会の親族集団の研究から、文化的現象としての親族関係を普遍的現象として定義することは不可能であり、それらを通文化的に比較することも不可能であると述べたことが紹介されました。
 一方、1990年代以降になるとフェミニズム研究などの進展にともない、人類学でも新しい親族研究が登場し、ジェンダー、生物的なつながり、身体といった視点から、生物学的関係性と社会的関係性のはざまにあるものとして親族が捉えられ、「自然」というものが意識されるようになったとのことでした。さらに、科学技術や生殖医療の進展によって、「自然」は20世紀後半のイギリス文化においては、重要な一般通念を形成しないようになり、親子関係をどのように捉えるか難しい時代に突入したことが述べられました。特に、現在の子育てや母性といった概念は近代以降に形成されたものであることが強調されました。
次に、大学における教育実践について、報告を頂きました。それは、医療系大学の一般教養科目において、学生に自分が家族・親族と認識する範囲を系図で書いてもらうというものであり、どうしてその範囲を家族・親族の範疇と認識するかについても説明書きを求めたとのことでした。その図には、色で区分けされているものもあれば、ペットなどが書き込まれているものもあり、一口に家族・親族といっても、多様な認識がなされていることが説明されました。こうした教育実践がジェンダーといったものを相対化するきっかけとなることを学びました。

 櫻田先生が教育実践をもとにお話された家族や親族に関する系図の書き方など、現在私たちが持っている家族や親族に対する認識は個人や社会の歴史的な背景を踏まえなければ、理解することができないものであると強く感じました。家族・親族のあり方は、常に変化しており、家庭や社会における両性の役割、家族・親族の存在形態については喧々諤々の議論が行われています。今後の歴史教育研究会においては、様々な地域や時代における家族や親族のあり方、さらにはジェンダーと諸社会・権力との関係を議論していく予定になっています。ジェンダーといった視点から歴史や社会のあり方を解明することによる成果をどのように受けとめ、さらには、教育現場でどのように活かすことができるのかを考えていきたいと思います。

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