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大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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2012年神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会夏期講座高大連携の試み~「18世紀のアジアをどう教えるか」~参加記

 暦の上では秋になりましたが、まだまだ厳しい暑さが続いています。皆様いかがお過ごしでしょうか。特任研究員の久保田裕次です。今回は2012年8月6日~8日にかけて、神奈川県鎌倉市の栄光学園中学校・高等学校で行われた神奈川県高等学校教科研究会社会科部会歴史分科会夏期講座高大連携の試み~「18世紀のアジアをどう教えるか」~の参加記です。

 この講座では、世界史研究における最新の研究成果をどのように教育実践の中で扱っていくべきかということを考えるために、大学教員が最新の研究成果を踏まえた講義を、高校教員が現場における実践を意識した講義を行い、世界史教育に関する議論を深めることを目指しています。今年は、18世紀のアジアは停滞したアジアではないという見方が広がってきたことを受けて、「18世紀のアジアをどう教えるか」をテーマとしていました。1日目(8月6日)は東アジア世界について、杉山清彦先生(東京大学)と矢野慎一先生(県立柏陽高校)、2日目(8月7日)は東南アジア世界について、桃木至朗先生(大阪大学)と福本淳先生(栄光学園高校)、3日目(8月8日)は南アジア世界について、秋田茂先生(大阪大学)と杉山登先生(逗子開成高校)による講義でした。午前の講義は特別授業との位置づけも与えられており、近隣を中心に多数の高校生が出席していました。また、昼休みには、多くの高校生が講師に対して積極的に質問をしていたことが印象的でした。

 午前は、テーマにそくして高校教員による授業と大学教員による授業が行われました。高校教員の授業では、大学入試を意識しつつ、多様な視点からアジアの各世界、それぞれの世界と日本との関係の再検討が行われていました。各アジア世界の王朝の歴史や「帝国」との関係に留意しながら、ヒト・モノ・情報の交流が活発に行われていた「開かれたアジア」像を示す報告でした。また、穴埋め形式を用いながら、簡にして要を得たレジュメに依拠しながら、身近な話題を取り上げるなどそれぞれの先生方の工夫が凝らされていました。ただ、高校生の意見の中には穴埋め形式の有効性について、疑問の声もありました。

 一方、大学教員は、先行研究を踏まえつつ、最新の研究成果について報告をしました。歴史系学部の受験を目指す高校生以外も学ぶ必要がある世界史とはどのようなものか、ということを一つの大きなテーマとしていました。細かい年代や語句を暗記することや大国だけの歴史を学ぶという姿勢を排するとともに、現代との関わりも指摘されていました。高校の教科書では十分に扱い切れていない事象を分かりやすく解説する一方で、ヒト・モノ・情報の交流によって、どのような各アジア世界が形成されることになったのか、どのように「帝国」を捉えるべきであるかなどが主な論点になっていました。

 午後は会場を移して、午前の報告者から授業内容の補足があり、それに対する高校教員からの意見・質問をめぐって積極的な討論が行われました。出席者の質問・感想文用紙には、それぞれのアジア世界が様々な地域と活発な交流を行っていたことを学ぶことができた、これまでに学んできた歴史像とは違い新鮮であった、いままでほとんど知らなかったことを詳しく知ることができたなどとの感想が多く寄せられました。好意的な意見が多かったように思います。

 高校教員から大学教員に向けては、様々な質問や意見が投げかけられ、世界史教育をめぐる現状や問題点について、議論が行われました。以下では、いくつかその具体例を挙げたいと思います。アジアに注目したことによって、西洋の歴史を通じてみると自然に持ってしまう歴史認識の相対化につながったのではないかと評価する意見が出された一方で、印象的だったのは「歴史の基礎」の検証について、議論となったことでした。一口に「歴史の基礎」といっても、更なる学問の探究を目指す学生のための入り口、社会で生きていくための教養としての役割など多様なものが想定されます。果たして「歴史の基礎」とは何か、様々な認識の違いが存在しているとの意見が多く出されました。「歴史の基礎」に関する認識の共有について、高大連携の必要性を再認識させられました。

 この点に関連して、大学教員と高校教員の共通の認識として、歴史に関する時間や空間についての知識が不足している大学生や高校生が多いとの意見も出されました。私自身にも当てはまることですが、私も全く同様の危機感を持っています。時間とは西暦がどれくらいのスパンを持っているのかなど暦に関する基礎的な知識、空間とは地理のことです。高校や大学の歴史教育においては、ある程度地理を押さえていく必要があり、そのことによって歴史に対する理解がより一層深まると思います。現在の高校の教科書や副教材の中で、どのような地図が、どのような目的のために掲載されているかということ、そして、それらにどのようなメリットとデメリットがあるのか検証することは非常に重要なテーマです。

 私は今年度から特任研究員に就任したため、神奈川の夏期講座への参加は今回が初めてでした。今回の夏期講座では、常に変化していく研究状況と教育現場の中で、最新の研究と教育実践とが連携していくことの難しさを感じました。しかし、だからこそこうした高大連携は不可欠であるとも痛感しました。また、この夏期講座は、19世紀から20世紀への移行期を研究している私にとって18世紀のアジア世界に関する最新の研究、または世界史教育に対する私自身の認識を深めるまたとない機会となりました。(文責:久保田裕次(特任研究員))

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