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Author:rekikyo
大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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少数民族と歴史教育

先週の後藤さんに引き続き,自己紹介を兼ねて今週のブログ記事を書かせていただきます特任研究員の岡田雅志です。現在,大阪大学大学院文学研究科文化形態論博士後期課程(東洋史学専門分野)に在籍しております(後藤さんは,晴れて博士号を取得されるそうですが,私は本年度中の博士論文提出に向けて悪戦苦闘中です・・・)。

今年2月に大阪大学歴史教育研究会事務局に入ることとなり,以来,皆さんのご協力をいただきながら,会運営にあたっております。実は,昨年までの2年間,タイに留学していたこともあり,ほとんど本会の活動には参加していませんでした。そのような中での,突然の事務局入りで,当初は戸惑うことも多かったのですが,歴史研究に携わる者として勉強になることが非常に多く,今ではこのような機会が与えられたことを大変感謝しています。

私の研究テーマは,ベトナムを中心に居住しているタイ族と呼ばれる「少数民族」の歴史です。タイと聞いてまず思い浮かぶのはタイ王国だと思いますが,その主要民族のタイ(シャム)族とは言語的に親縁関係にあります。私が研究しているタイ族は,中国雲南,ラオス,ベトナムにまたがる山間部に,盆地毎にムオン,ムアンなどと呼ばれる小王国を形成し(ディエンビエンフーの戦いで有名なディエンビエンフー盆地もタイ族の居住地で,かつてムオン・タインと呼ばれたムオン国家がありました),各有力ムオンの長は,中国,ラオス,ベトナムなど周辺の有力な政治権力(しばしば同時に複数の勢力)に庇護を求めていました。それが19世紀末,インドシナ半島を植民地化したフランスと中国の間で国境が策定される過程で,上記のような重層的な政治関係は解消され,インドシナ戦争後,社会主義ベトナムの統治下に入る中でムオンを統治していた首長権力も解体され,タイ族は現在のようなベトナムの1少数民族と見なされる存在になってゆきました。

 そのため,ベトナムの歴史教科書などでは,タイ族は主に外敵(中国,フランス)の侵略に対して共に戦う兄弟民族の一つとして描かれるにすぎず,国家統合と民族団結を示すためのアクセサリーのような位置づけです。そこでは,タイ族を中心においた記述は当然ながらありません。一方,私が留学していたタイ王国においても,タイ族を含め,同じタイ系言語を話す民族集団に関する研究は盛んなのですが,タイ王国においてナショナリズムが華やかなりし頃に唱えられたタイ族南下説(中国にいた原タイ族が東南アジアに南下して国家を作り,南下とともに発展を重ねた結果生まれたのが現在のタイ王国であるとする説で,皆さんもご存知の通り,現在,学術的には完全に否定されています)を引きずっており,タイから見て北方の山の中にいるタイ族は,未発展のタイ系民族だという偏見はいまだに再生産されているように感じました。タイ族は,ベトナムに包摂された後も,その歴史像においては,タイとベトナムへの両属を強いられていると言うこともできるかと思います。

 私は,このような国家の枠組みを取り払い,タイ族が住んでいた地域に視点をおいて,タイ族の歴史を研究することを目指しているわけですが,実際のところ,彼ら(の過去)を客観的な研究対象としようとする私自身も決して様々な偏見,思い込み(そもそも前近代におけて「タイ族」という民族集団を対象化できるのかという重要な問題にも関係してきます)から自由でないことに,気付かされることも常であり,少数民族の過去を研究し,記述することの困難さをあらためて感じています。日本の世界史教育において,タイ族のような過去においても大国家を建設することがなかった民族集団に焦点があたることはないでしょうし(実際世界史の大きな動きの中で重要な役割を果たしている場面もあるのですが),その必要があるとも思いませんが,既存の歴史像の塗り替えと同時に,ある歴史像を語ることによってこぼれおちるものの存在(それは当然民族集団だけではないはずですが)への気付きの仕掛けのようなものは常に模索されるべきと考えています。本研究会においても,すでに北海道の吉嶺先生の新しい「北方」史叙述にむけての画期的な取り組みが紹介されておりますし,また,2学期以降,環境・科学技術・ジェンダー・ポストモダンの視座をふまえた新しい文化史といった,歴史を記述するあるいは歴史を読む人間の視点や認識そのものが問い直されるテーマを取り扱ってゆくことになっておりますので,研究会や本ブログでの議論を通じて私自身歴史像の発信を志す者として様々なヒントをいただきながら,本会にも何がしかの貢献ができるよう努力してまいりたいと思います。あらためまして,どうぞよろしくお願いいたします。(文責:岡田雅志(事務局))

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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