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Author:rekikyo
大阪大学歴史教育研究会の公式ブログです。
原則として事務局スタッフの記事を中心に週一更新、その他告知や参加メンバーによる投稿等があれば随時掲載します。

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時間版のGISは可能か?~GT-TimeとGoogleのタイムライン検索から考える

いきなり挑発的なタイトルを付けてしまいましたが、要は「地理学におけるGIS(Geographic Information System・地理情報システム)のような情報システムを、歴史学はその時間認識を扱うツールとして用意できるのか?」ということです。
もちろん私は地理学を専門にしている人間ではありませんし、本格的なGISに触れた経験もないのですが、近年では特に地理学の専門家でなくても、GISの存在に触れたりその恩恵にあずかったりする機会が増えてきています。
誰でも無料で簡単に利用できるGoogleEarthが普及したことも、GISの認知度を高め、その影響力を増す上で強力な後押しをしたと思われます。
私自身も個人的にGoogleEarthを利用すると共に、自分の個人ウェブサイトではGoogleマップのAPIを使って、ささやかながら情報発信を試みたりしております(まだ大した情報はありませんが)。
このように素人ながらGIS(「的なモノ」でしょうか。厳密には……)に触れている立場として、こういった便利なツールの時間版/歴史版があるとしたらどんなものになるのか、それが普及して歴史叙述や歴史教育の中で使えるようになるためには何が必要か、そういった問題について非常に興味を持っています

まずGT-Time(HuTime)についてですが、これは「時間軸に沿って多様な情報を表示したり、GISのような手法によりそれらの関係を解析したりするための統合的な環境を提供する情報解析ツール」(http://www.chikyu.ac.jp/nihudb/gt-tools/report2010.pdf)として開発されたものです。
ソフトウェアをダウンロードして使用することもできます。(http://www.chikyu.ac.jp/nihudb/gt-tools/GT-Time.html
私自身は昨年9月に開催された京都大学東南アジア研究所・地域情報学研究会主催の海域アジア史研究会特別例会「実データ(史資料)にもとづく海域アジア交流の時空間ネットワーク」において、柴山守先生の御報告の中で初めて拝見しました。
その時は永積洋子(編)『唐船輸出入品数量一覧1637~1833年』や『歴代宝案』等のデータをGT-Timeで分析する(「データマイニング」というそうです)ことで、新たな研究可能性を探るというお話だったと記憶しております。
私もその時その御報告に対する発言をした記憶はあるのですが……残念ながら、何をしゃべったのかどうしても思い出せません。

ただ、その後今年の5月になって、GT-Timeの開発者のお一人である関野樹先生から改めてGT-Timeの可能性と課題についてお話を伺う機会があり、そこでは現在の大きな課題として「時間基盤情報」をどのように、どのレベルで用意するべきかということが挙げられているということが示されました。
「基盤情報」というのは、GISの場合だと地図情報や航空写真データなど、個々の地理データを把握する際に最低限必要な手がかりとなるデータのことですが、確かにこれが用意されていなければGoogleEarthもGoogleマップもまずほとんど利用されることが無かったはずで、利用する側としては決定的に重要な要素だと思われます。
とはいうものの、GT-Timeに相応しい「時間基盤情報」とは果たしてどのようなものなのか、実は真剣に考えはじめるとなかなかに難しい問題です。

GoogleEarthやGoogleマップを提供しているグーグルは、ウェブサイト検索を足掛かりに発展してきた社風そのままに、ウェブサイト上の膨大な情報を「時間基盤情報」として利用するサービスとして、「タイムライン検索」という機能を提供しています。
利用法は非常に簡単で、まず普通にGoogleでキーワード検索を行い、出てきた検索結果の画面の左下側に表示される「もっとツールを見る」をクリックして、「タイムライン」を選択(クリック)するだけです。

ここでは試しに「琉球」で検索してみましょう。
 「琉球」でGoogleタイムライン検索を行った結果

検索結果の画面を御覧になるとわかりますように、「日付範囲を変更」あるいは画面の一番下にあります「1ページあたりの表示件数」の部分をクリックすることで、それぞれの設定を変えることが可能です。
検索結果は時間が経つと変化していきますので、ひとまず今日の検索結果のうち、「1ページあたりの表示件数」が10件の場合を挙げておきます。

 1372年 琉球と中国の公式関係樹立
 1429年 琉球王国の誕生(明朝への朝貢が中山に一本化)
 1609年 島津氏の琉球侵攻(2件)
 1799年 識名園の造営
 1871年 台湾漂着宮古島民殺害事件
 1879年 「琉球処分」
 1952年 琉球政府発足
 2000年 琉球王国のグスク及び関連遺産群の世界遺産指定
 2011年 (琉球新報の新聞記事)

それぞれの年の代表として表示されるリンク先は、必ずしも歴史的事実を参照するのに最適なサイトとは言い難いようで、恐らくは通常の検索ランクを決定するアルゴリズムで選ばれているものと思われます。
また、最後に今年(2011年)が出てくるのは、インターネット上の情報として一番多いのは今現在のニュースや情報であることを反映しているのでしょう。
ただ、それでも主要10件のみの表示に限れば、琉球史の略年表として読むのにそれほど違和感はないような気もします。
もちろん、1945年(沖縄戦・米軍政期の開始)や1972年(「沖縄」の施政権返還)などが落ちていたり、細かな部分では気になる点も少なくないのですが……。
また、「Ryukyu」と英語表記で検索してみたり、検索オプションで対象言語を変えたりすると、当然母集団となるウェブサイト情報の変化に伴って、表示される検索結果も異なってきます。
要するに、これはインターネット上で語られることの多い歴史情報(年情報付きのデータ)をピックアップする機能であり、特定の言語圏における特定の語句について、歴史的な「一般認識」を可視化する機能ということなのでしょう。

こういった機能を、歴史教育の現場で利用することは、工夫次第では可能だと思います。
もちろん、この検索結果自体は社会における誤解や様々なバイアスを含むものですから、そういった背景を踏まえて批判的に読み込んでいく必要性とそのやり方をセットにして教えるということが前提ですが。
とはいえ、こういったデータをいくら積み重ねても、それだけでは「時間基盤情報」にはなりようがないということも否定しようのない事実でしょう。

実際に共通の基盤となりうるような「時間基盤情報」とはどのようなものなのか、あるいはそういった「時間基盤情報」をどのように用意すべきなのか、こういった問題についてはまだ着手されはじめた段階のような気がします。
その中のいくつかの要素については、地理学におけるGISのモデルを援用することで解決できるかも知れませんが、恐らくそれだけでは解決できない要素の方が、時間/歴史を扱う場合にはずっと多いように思われます。
そもそも、時間認識というものは「可視化」したり「鳥瞰」したりできるものではない、と言ってしまえばそれまでです。
それでも、やはり明確な形として、「時間基盤情報」は提供されるべきでしょう。
本研究会でも重要なテーマとなっている、現代社会に適応した歴史事項のスクラップアンドビルドも、そのような「時間基盤情報」として相応しいか否かという判断基準と共に行われる必要があると思います。
今月から始まる、環境史・技術史に比重を置いた報告シリーズも、ゆくゆくはそういった「時間基盤情報」として登録されることを視野に入れた内容になるはずです。
それらの内容を拝聴しながら、これをGT-Timeの「時間基盤情報」にするためにはどうすればよいのか、また「時間基盤情報」はどのようにモデル化されるべきなのか、少しずつ考えてみたいと思っています。

このエントリをお読みになっている皆さまも、利用者の立場からどのような情報が必要か、どのような機能が欲しいのか等等、御意見をいただければ幸いです。               (文責:岡本弘道(事務局))

テーマ : 歴史 - ジャンル : 学問・文化・芸術

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